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贈与税の配偶者控除適用上の注意点
贈与税の配偶者控除とは、夫婦間で居住用の不動産、あるいはそれを取得するための資金の贈与があった場合、2,000万円までの贈与を非課税とする特例です。
老後の妻の生活のために夫が住宅の購入資金を贈与するケースや、夫婦でマイホームの持ち分を2分の1ずつとしていたところ、その持ち分を一方に贈与するケースなどに使えます。
便利な制度ですが、適用する際はいくつか注意点があります。
目次
婚姻期間が20年以上必要
贈与税の配偶者控除が適用できるのは、婚姻期間が20年以上ある夫婦間の贈与です。
20年であるかどうかは、婚姻届の提出日から贈与日までの期間で判定します。
1年未満の期間がある場合は、切り捨てとなりますので、たとえば19年11か月目の婚姻期間は19年となり、対象外となります。(相続税基本通達21-6-7)
内縁関係は含まれない
特例の対象となるのは、婚姻している夫婦ですので、内縁関係にある者同士では適用できません。
同じ配偶者からは1度だけ
同じ配偶者からの贈与で適用できるのは、1度きりとなります。 (再婚によって別の配偶者から受けることは可能です。)
専ら「居住用」の不動産であること
不動産を贈与する場合、この特例の対象となるのは「専ら居住の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利若しくは家屋」またはその「金銭」です。(相続税法第21条の6)
不動産の贈与における注意点
家屋のみ・土地のみの贈与でも構いませんし、借地権の贈与でもOKです。 ただし、店舗兼住宅等の贈与や、その敷地の贈与のように100%居住用でないものを贈与したときは、贈与を受けた配偶者が居住用として使っている部分しか特例の対象になりません。 たとえば、120㎡の店舗兼住宅で、
・居住用 40㎡
・事業用 80㎡
の場合、評価額の3分の1(40/120)が特例の対象となります。
もし居住用と事業用の「併用部分」がある場合は、次のように計算します。
・居住用 60㎡
・事業用 40㎡
・併用 20㎡
【居住用部分の面積】
60㎡+20㎡×60㎡/(120㎡-20㎡)=72㎡
つまり、併用部分を除いた他の部分のうち、居住用が占める割合に応じて併用部分から居住用部分を算定します。(相続税基本通達21-6-2)
なお、90%以上が居住用のときは、全部を居住用として扱うことができます。(同通達21-6-1)
持ち分の贈与における注意点
不動産の持ち分を贈与した場合も、特例の対象となります。
たとえば夫の持ち分2分の1を贈与したときは、その不動産の評価額の50%の贈与があったと考えます。
ただし、店舗兼住宅等で、贈与を受けた持ち分の割合が居住用部分の割合以下の場合は、その贈与を受けた持分の割合に対応する店舗兼住宅等の部分を居住用不動産に該当するものとして扱えることになっています。(同通達21-6-3但し書)
これは、贈与された持ち分割合を優先的に居住用部分に充ててよいという意味で、納税者に有利となっています。
金銭の贈与における注意点
もし贈与された金銭と自己資金を合わせて、居住用不動産の取得と別の財産の取得を同時に行った場合、贈与された金銭は、まず居住用不動産の取得に充てられたものとして計算することができます。
たとえば、夫から贈与された2,000万円と自己資金1,000万円を使って、居住用不動産2,500万円、家具500万円を同時に購入した場合、夫からの2,000万円は全額、居住用不動産に充てられたものとして非課税となります。(同通達21の6-5)
翌年3月15日までに入居すること
不動産の贈与を受けた場合は、以下の2つを満たす必要があります。
・贈与のあった翌年3月15日までに居住の用に供すること
・その後引き続き居住の用に供する見込みであること
これは、一緒に住んでいる自宅の持ち分の贈与であれば特に問題にはなりません。
注意が必要なのは、金銭の贈与です。
金銭の贈与を受けた場合は、以上の2つに
・贈与のあった翌年3月15日までに居住用不動産を取得すること
・同日までに居住の用に供すること
・その後引き続き居住の用に供する見込みであること
をすべて満たす必要があります。
つまり、金銭贈与を受ける場合は、住宅の取得までの計画を立ててから贈与を受けることが重要です。
実際には2,110万円まで非課税に
贈与を受けた人にはもともと年間110万円の基礎控除があります。
もし1年間に受けた贈与が配偶者控除の対象となる不動産や金銭のみであれば、非課税となる上限額は、2,000万円に基礎控除を加えた110万円となります。
ただし、同じ年に複数人から贈与を受けたとしても基礎控除の上限は110万円ですので注意が必要です。
相続税対策としては慎重に
非課税で生前贈与ができれば、相続財産が減少するため相続税の節税となります。
ただし、もし贈与を受けた側の配偶者が先に亡くなれば逆効果です。
また、もともと相続税は、配偶者の税額軽減によって最低でも1億6,000万円までは非課税となるため、あえて生前に贈与するメリットがあるかどうかは、個別判断が必要です。
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