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トラブルを生み出す「共有」不動産

2023年01月01日
税務

「共有」不動産とは

共有不動産とは、一筆の土地や同じ建物に対し、複数の個人や法人が所有権を共有している状態の不動産をいいます。

不動産の共有者には、それぞれ割合による「持ち分」が定められています。

たとえば、所有者であるAさんは2分の1、所有者であるB社は6分の1・・・のような感じです。

誰が「持ち分」をいくら所有しているかについては、その不動産の登記事項証明書から調べることができます。

共有不動産であれば、登記事項証明書の権利部(甲区)の「権利者その他の事項」に、共有者の氏名やその持分割合が記載されています。

なぜ不動産が「共有」になるのか

不動産が共有状態になる理由はさまざまですが、中でも身近な理由は相続です。

相続が発生すると、不動産を含む相続財産は、法定相続分による相続人の共有状態となります。

法定相続分とは、民法によって定められた相続権の割合のことで、たとえば、相続人が妻と子2人の計3人であれば、妻2分の1,子が4分の1ずつになります。

もちろんこれは相続発生時の法律上の状態であって、その後、故人の遺言や相続人同士による遺産分割協議によって誰が不動産を相続するかを決めていきます。

しかし、そのまま法定相続分で相続することもありますし、遺言の内容や遺産分割協議の結果、法定相続分以外の割合で共有状態とすることもあります。

こうした経緯で不動産が複数人の共有状態になることがあるのです。

共有不動産がトラブルになる理由

不動産全体を売却できない

共有不動産は、1人の意思で、不動産全体を売却することができません。

不動産全体を売却するには、全員の承諾が必要になります。

自己の持ち分だけであれば売却することはできますが、戸建ての建物やあまり広くない土地の一部を持ち分として相続した場合、それを購入してくれる相手はなかなか見つかりません。

持ち分を積極的に買い取ってくれる業者も中にはありますが、相場よりも安価で買い取られることが多いようです。

権利関係が複雑になる

「共有といっても相手は兄弟だから、トラブルとは無縁だ」と、安心して放置するケースもあります。

しかし、不動産を共有状態のままで放置している間に他の所有者に相続があると、いつの間にかまったく知らない人たちと不動産を共有してしまっている場合があります。

そうなってから売却しようとしても、全員に連絡をとることが難しいため、専門家の手を借りなければならなくなってしまいます。

人数が増えるほど、処分のために手間やコストが上がってしまうということです。

権利関係が複雑になってしまう前に対処することが、財産をムダに浪費しないことに繋がります。

共有状態を解消する方法

遺産分割前であれば、共有不動産のデメリットを伝え、なるべく共有状態にならないよう話し合いましょう。

すでに共有している場合は、下記の解決方法があります。

全員で売却する

他の所有者と話し合い、全員で不動産を売却する方法です。

なお、持ち分の売却であっても、個人所有の不動産の売却益には所得税や住民税がかかります。

所有者を1人にする

共有者の持ち分を、贈与や売却によって共有者のうちの1人に移転する方法もあります。

ただし、遺産分割協議後の移転には、贈与や売却による課税が生じます。

売却価格によって発生する税金が変わることもあるため、事前に税理士にご相談ください。

分筆する

持ち分に応じて分筆(登記上、一つの土地を複数に分けること)をする方法もあります。

特に広い土地であれば、分筆したほうがかえって使い勝手が良く買い手が見つかりやすい場合も考えられます。

分筆は、面積で分けるのではなく不動産の価値で分けることが一般的です。

したがって、不動産評価の専門知識が必要になりますので専門家に相談しましょう。

共有状態のままで問題ないケースも

親子で共有している場合

たとえば、父の相続で、母と子が自宅を共有する場合、いずれ子が不動産を単独で相続しますので、共有状態のままでも問題になることは少ないと考えられます。

また、あえて共有するほうが相続税の負担を減らすことができる場合もあります。

ケースバイケースですので、税理士にご相談ください。

地積規模の大きな宅地にあたる場合

先ほど持ち分で分筆する話がありましたが「地積規模の大きな宅地」に該当する場合は、分筆せず全体を一つの宅地として評価したほうが、相続税評価額が下がります。

共有状態であっても、地積の判定は共有地全体でしてよいことになっています。

(参考)国税庁:地積規模の大きな宅地の評価

マイホームの売却予定がある場合

マイホーム(建物)が住んでいる人の共有状態にある場合、マイホームを売却すると、各共有者がマイホーム特例(譲渡所得に対する最大3,000万円の控除)を適用できます。

賃貸不動産の場合

共有状態の賃貸不動産から生じた賃料は、各共有者が持ち分にあたる賃料の確定申告をします。

この場合、所得税の節税面で以下の利点があります。

・各人が青色申告特別控除を適用できる

・所得税の累進課税のしくみによって1人が賃料全額を申告する場合よりも税負担が少ない

・事業的規模の判定(いわゆる「5棟10室」の判定)は共有状態でも各人が賃貸不動産全体の規模でできる