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遺贈とは何か?相続との違いや注意点を解説

2022年05月01日
法務税務

遺贈とは何か、遺贈の注意点、遺贈と相続の違いについて解説します。

遺贈とは

遺贈とは、遺言によって遺産を贈与することをいいます。

遺贈には、特定遺贈と包括遺贈があります。

特定遺贈とは

特定の遺産を指定して贈与することです。

包括遺贈とは

財産を特定せず、全部または一部を割合で指定して贈与することです。

包括遺贈をする相手が相続人でない第三者の場合、相続人と同じ権利義務を持ちます。

遺贈を行う目的

遺贈を行う目的はそれぞれですが、一般的には下記の目的で用いることが考えられます。

・各相続人の相続財産を指定したい

・各相続人が争わないように財産の分け方に道筋を示してやりたい

・相続人でない第三者に遺産を渡したい

遺贈と相続の違い(一般的な違い)

財産を取得する人物

遺贈では、財産を取得させる相手を指定することができます。

相続人以外の人物を指定することもできますし、法人に財産を寄附することもできます。

相続では、法律で定められた相続人に財産を取得する権利があります。

取得する財産の範囲

遺贈では、指定した財産のみを相手に取得させることができます。

これに対して相続は、被相続人の権利義務を承継しますので、財産だけでなく義務(負債)も相続します。

なお、遺贈でも包括遺贈であれば、相続人と同様に権利義務を承継することとなります。

権利放棄の手続き

相続では、家庭裁判所に対し、期限内に相続放棄の申立てをすることで、相続人である権利を放棄することができます。

これに対し遺贈は、その権利をいつでも放棄できます。

ただし、包括遺贈を放棄するときは、相続人と同様に家庭裁判所への申立てを行います。

遺贈と相続の税の違い(相続税)

遺贈も相続も、同じ課税対象から計算した相続税を負担しなければなりません。

相続税の計算方法

相続税は、被相続人の遺産総額から計算した税額を、各人が取得した遺産額に応じて按分するという特殊な計算方法になります。

各人が取得した遺産額に応じて税額を按分するため、遺贈も相続でも、相続税を負担する義務があります。

相続税の計算手順

遺贈を受けた人も相続を受けた人も、下記の手順で相続税を計算します。

 :相続税の課税対象となる遺産の総額(全員分の課税価格の合計)から基礎控除額を差し引く

   → 基礎控除額:3,000万円+法定相続人の数×600万円

 :Aを法定相続分に分け、法定相続分に応じる金額から相続税を計算する

 :Bで計算した相続税を合計した相続税の総額を、各人が取得した遺産額に応じて按分する

 :各人の状況に応じて2割加算や税額控除などを適用し、納付税額を計算する

A~Cは共通ですが、Dは遺産を取得した人の属性が関係します。

遺贈と相続の違いが出やすいものとして、Dの「相続税の2割加算」があります。

相続税の2割加算とは

「相続税の2割加算」とは、被相続人の一親等の血族や配偶者にあたらない人が遺産を取得すると、相続税の負担額が2割加算される(=1.2倍になる)というルールです。

一親等の血族とは、被相続人の「子」と「両親」ですから、孫や兄弟姉妹は、2割加算の対象になります。

なお、2割加算の適用範囲となる一親等の血族には、例外的に下記の扱いがあることに注意が必要です。

・孫養子は、2割加算の対象となる

・子の代襲相続人である孫(孫以下の直系卑属を含む)は、2割加算の対象にならない

・子の代襲相続人である孫(孫以下の直系卑属を含む)が孫養子である場合も、2割加算の対象にならない

孫は、基本的には2割加算の対象ですが、子の代襲相続人である場合は、2割加算の対象にならないということです。

遺贈と相続の税の違い(その他の税)

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産(土地や建物)を取得したときに、都道府県から賦課される地方税です。

毎年発生する固定資産税と異なり、不動産を取得したタイミングにだけ発生します。

相続によって不動産が相続人に移転したときは発生しませんが、贈与(遺贈を含む)では発生します。

滋賀県ホームページ:不動産取得税

登録免許税

登録免許税とは、不動産登記をするときに発生する国税になります。

相続による登記と贈与(遺贈を含む)では、登録免許税の税率が異なります。

【参考】

(相続)不動産の価額×0.4%

(遺贈)不動産の価額×2%

※必ず最新の税率をご確認ください。

国税庁ホームページ:登録免許税の税額表

遺贈の注意点

正しい遺言書を作成すること

遺言が法的に有効であるためには、法律で定められた作成方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)に従って遺言書を作成する必要があります。

作成方式に不備のある遺言書は、関係者を混乱させるだけですので、必ず専門家に相談して作成しましょう。

子や両親などに遺留分があること

相続人である子や直系尊属には、最低限の遺産を相続できる「遺留分」という権利が認められています。

もしこの権利を侵害する遺贈を行った場合、権利を侵害された子や直系尊属には、遺贈を受けた相手に対し、侵害額の請求を行う権利があります。