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相続時精算課税制度のメリット・デメリット

2021年04月15日
税務

相続時精算課税制度の概要とそのメリット・デメリットについて解説します。

 

 

 

 

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、親や祖父母などから累計2,500万円までの贈与を受けた場合、その贈与税を非課税とし、相続時に精算する制度のことです。
順を追って説明しますと、そもそも贈与を受けた人は、1月1日から12月31日までの贈与の累計が110万円を超える場合、贈与税を納税しなければなりません。
この原則の課税方法を、「暦年課税」といいます。
しかし、親や祖父母など特定の1人との間で、贈与を受けた人が「相続時精算課税」を選択することを税務署に届け出ることにより、その人物からの贈与に限って、累計2,500万円までの贈与税が非課税になります。
その代わり、その特定の人物が亡くなったときの相続で、相続時精算課税を使って贈与を受けた財産を「相続税」の計算の対象とし、「相続税」の支払いをもって精算するというのが、相続時精算課税制度の特徴です。
相続時精算課税制度を選択できるのは、

 

・贈与をした人の直系卑属(子など)にあたる推定相続人
・贈与をした人の孫
です。

 

一般的には、子や孫になります。
他にも、贈与が行われた年の1月1日において、贈与をした人が60歳以上、贈与を受ける人が20歳以上である等の要件があることに注意が必要です。

相続時精算課税制度のメリット

生前贈与に税がかからない

最大のメリットは、累計2,500万円までの贈与を、贈与税の負担なしで実行できることです。
高額な財産を生前に贈与すると、実質的な恩恵は贈与税の分だけ目減りします。
しかもこれが不動産など金銭以外の贈与であれば、その税金は、贈与を受けた人が捻出しなければなりません。
このことが資産の少ない若年者などへの積極的な贈与の妨げとなりやすいのですが、相続時精算課税を選択すれば、こうした問題を解決できます。

相続税の方が低くなりやすい

相続時精算課税によって最終的に負担する税金は贈与税ではなく「相続税」です。
相続税は、すべての相続財産から基礎控除額(3,000万円+法定代理人の数×600万円)を差し引き、その残りで税額を計算します。
したがって、相続時精算課税制度によって取得した財産を加えても、合計が基礎控除額より低ければ、税金は発生しません。
また、相続税の計算に使用する税率は、贈与税と同様に、金額の高い部分ほど税率が高くなるしくみですが、その上昇は相続税の方が緩やかです。
課税対象となる財産の範囲が異なるため、税額を単純比較することはできませんが、基礎控除額や税率の特徴から、一般的には相続時に精算したときの税負担の方が減るケースが多くなるといえます。

若年世代に早めに財産を移転できる

若い世代は重大なライフイベントが重なり、何かとお金が必要になりますが、社会人になってから日が浅く、十分な財産の確保が難しい時期でもあります。
こうした時に、まとまった額の財産を非課税で受け取れるメリットは大きいといえます。
贈与をする側としても、生前に贈与することによって喜ぶ子や孫の顔を見ることができるメリットは大きいでしょう。
ただし、マイホームの購入費や結婚・子育て費用など用途制限のある金銭贈与の場合は、別の非課税制度があるため、そちらをまず検討しましょう。

相続時精算課税制度のデメリット

相続税の節税にはならない

最大のデメリットは、贈与税を課さない代わりに相続税を課すということです。
したがって、相続税の節税対策にはなりません。
相続税対策のために生前贈与を行う方法は別にありますので、目的に応じて使い分けることが非常に重要です。

税務署の手続きが必要

相続税精算課税制度を使って贈与を受けるには、相続時精算課税制度を選択した年に届け出を提出し、その後も制度を使って贈与を受けた年は、税務署に必要な書類を提出し続けなければなりません。
手続きの煩雑さもそうですが、これは言い換えると、相続時精算課税制度を使った財産を税務署は確実に把握していますので、相続時に申告漏れがないよう十分気をつける必要があります。

1度選択すると撤回できない

1度でも相続時精算課税を選択すると、その相手からの贈与を、暦年課税に戻すことはできません。
暦年課税では、毎年110万円の基礎控除があり、その分は永久に課税されませんので、この非課税枠を利用した贈与の方が相続税対策としては有効です。

2,500万円を超えると贈与税がかかる

相続時精算課税を選択した人からの贈与が累計2,500万円を超えると、その超えた分には一律20%の税率で贈与税がかかります。
これにより支払った税額もまた相続時に精算されるため、それまでの一時的な負担になりますが、少額な贈与であっても暦年課税の110万円の控除が使えず一律20%の税負担が生じることには留意する必要があります。