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相続空き家3000万円控除について

2021年01月15日
法務

相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たすことによって、その譲渡所得の計算から3,000万円を控除することができる特例があります。
この特例は、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいますが、長いので、ここでは「相続空き家の3,000万円控除の特例」と呼ぶことにします。
親が生前に1人暮らしをしていた自宅を相続し、それを売りたいという方は、「相続空き家の3,000万円控除の特例」の適用を忘れずにご検討ください。

 

 

 

 

相続空き家の3,000万円控除の特例とは

「相続空き家の3,000万円控除の特例」とは、被相続人(亡くなった人)が生前に1人で暮らしていた家屋とその敷地等を、相続や遺贈によって取得した人が、1億円以下で売却した場合、「譲渡所得」の額から最高3,000万円まで控除することができる特例になります。

譲渡所得とは

不動産の譲渡所得とは、不動産の売却収入から、その不動産の取得費や譲渡費用を差し引いた額、つまり不動産を売って得た「儲け」のことです。
不動産を売却して生じた譲渡所得には、通常、以下の税率で所得税や住民税がかかります。

 

・売却した年の1月1日における所有期間が
→5年以下 所得税:30% 住民税:9%
→5年超  所得税:15% 住民税:5%
(10年を超える居住用不動産には、上記とは異なる軽減税率の適用があります)

 

もし特例によって譲渡所得から3,000万円を控除できれば、この税負担を大きく軽減することができます。
つまり、「相続空き家の3,000万円控除の特例」とは、相続税ではなく、それを売るときにかかる所得税と住民税が安くなる特例です。

相続空き家の特例の要件

「相続空き家の3,000万円控除の特例」では、必ずしも家屋とその敷地等を一緒に売却する必要はなく、
・家屋のみを売却するケース
・家屋を取り壊して敷地のみを売却するケース
であっても、「家屋」と「敷地等」それぞれの要件を満たせば適用できます。
ただし、相続や遺贈によって取得するのは、家屋とその敷地等の「両方」でなければなりません。(租通35-9)
なお「敷地等」には、土地と土地の上に存する権利も含まれるため、借地権でもOKです。(特措法第35条第4項)

対象となる家屋の要件

・相続の開始の直前(※)において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、被相続人以外に居住をしていた人がいないこと
・昭和56年5月31日以前に建築されていること
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・売却時に、一定の耐震基準を満たすこと(相続後のリフォーム等で対応可)
など
(※)老人ホーム等に入所するなどの理由で直前に居住の用に供されていない場合でも適用できる可能性があります。

対象となる敷地等の要件

・相続の開始の直前(※)において被相続人の居住の用に供されていた土地やその土地の上に存する権利であること
(※)老人ホーム等に入所するなどの理由で直前に居住の用に供されていない場合でも適用できる可能性があります。

その他の要件

・相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること(ただし、令和5年12月31日までの売却が対象)
・相続または遺贈によって取得した家屋・敷地等であること
・相続から売却まで、事業、貸付け、居住の用に供されていないこと
・売却代金が1億円以下であること
・親子や夫婦間などの売却でないこと
・一定の書類を添付し、一定事項を記載した確定申告書を提出すること
など
その他、細かい要件がありますので適用は専門家にご相談ください。

取得費加算の特例とは併用不可

相続税を支払って取得した財産を一定期間内に売却した場合、支払った相続税を取得費に加算して、譲渡所得から控除できる制度があります。
ただし、この制度を使用する場合は、相続空き家の3,000万円控除は使えません。
どちらかを選択しなければなりませんので、注意してください。