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未成年の相続人がいる場合

2020年12月01日
法務

親などが死亡し、未成年者が相続人になるケースがあります。
今回は、未成年者が相続人になったときの注意点を解説します。

 

 

 

 

そもそも未成年が相続人になれるのか

未成年とは

未成年とは、現行法では20歳です。
2022年4月1日から、18歳に引き下げられます。

相続に年齢は関係ない

相続人になるために年齢は関係ありません。
まず民法第3条で「私権の享有は、出生に始まる」と定められているように、人は生まれながらに権利の主体として保護されています。

 

さらに相続に関しては、特別に「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」(民法第886条)というルールがあります。
このことから、相続に関しては、相続開始のときに現に生まれていなくても胎児として存在していれば、相続人となることができます。(亡くなって出生した場合は相続人になりません。)

未成年の相続人と特別代理人

相続人が未成年の場合や、相続人の1人が未成年である場合には、成人とは異なる法律上の注意点が存在します。

未成年者は単独で法律行為ができない

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければなりません。(民法第5条)
未成年者は、自身が行う法律行為の効果や影響を、正しく認識する能力に乏しいという考え方があるためです。
つまり未成年者は、単独で法律行為を行うことができません。

 

このことから、未成年者が相続において複数の相続人との間で遺産分割協議を行う場合、法定代理人の同意が必要となります。
未成年者の法定代理人は、通常は親権者です。

 

なお、未成年者であっても婚姻している者は、成年として扱われますので、単独で遺産分割を行うことができます。

特別代理人の選任

未成年者は、親の同意があればさまざまな法律上の行為ができるのですが、もしその行為が、親との間で利益が相反する場合、親はその行為の法定代理人にはふさわしくありません。
親との間で利益が相反する代表的なケースが、相続における遺産分割です。

 

たとえば、父親が亡くなり、母と長男が相続人になるケースがあったとします。
遺産分割で財産を分ける場合、長男が取得する遺産を少なくすれば、母が取得できる遺産は多くなります。
このような関係を利益相反といいます。
この場合、母は長男の法定代理人にふさわしくないため、法律では、親権者に対し特別代理人の選任を義務付けています。(民法第826条第1項)

 

そのほか、1人の親権者が複数の子どもの法定代理人を兼ねている状態で、子ども同士の利益が相反する場合も特別代理人を選任する必要があります。(同条第2項)
これは法律上の義務ですので、たとえ「私は子どもの遺産を少なくしようとしたりしない」とか「子どもを不平等に扱うことなんてない」という考えがあっても(ほとんどの親がそうだと思いますが)、選任しなければなりません。

特別代理人を選任する方法

特別代理人を選任するには、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。 申立てには、必要書類を準備するとともに、特別代理人候補者を決めておく必要があります。

申立てができる人

親権者や、その相続の利害関係人。

申立ての費用

・子1人につき収入印紙800円分(「特別代理人選任申立書」に貼る)
・連絡用の郵便切手(金額は家庭裁判所に確認する)

申立てに必要な書類

・特別代理人選任申立書
・添付書類

 

「特別代理人選任申立書」の様式は、家庭裁判所のホームページからダウンロードできます。
関係者の情報や、申立てを行う理由などを記載します。
裁判所HP:「特別代理人選任」

 

「添付書類」としては、
・未成年者と親権者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・特別代理人候補者の住民票か戸籍の附票
・利益相反に関する資料
などが必要となります。
利益相反に関する資料としては、決まりはありませんが、裁判所のホームページでは遺産分割協議書案などを例に掲げています。

特別代理人候補者とは

特別代理人になれるのは、その相続に利害関係のない人であればよく、親族でも構いません。(例:未成年者の叔父・叔母、相続人でない祖父母など)
専門家を候補者とすることも可能です。
候補者となった人物について、家庭裁判所が適格であると認めた場合に、申立てが認められます。