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会社の経営者が亡くなった時の相続について
親が会社の経営者である場合、親の会社に関係する財産も相続の対象になるのでしょうか。
目次
会社の財産は相続財産にならない
会社の経営者の相続において相続財産となるのは、経営者個人の財産です。
会社の財産は、法人の所有物ですので、相続財産にはなりません。
経営者の相続財産にならない財産の具体例
たとえば、以下のような財産は、相続財産に該当しません。
・会社の商品
・会社が保有する工場や機械
・会社に属する権利
経営者としての地位も相続できない
会社の取締役・代表取締役のような地位は、特定の人に専属する性質のものですので、相続することができません。
相続人が会社の取締役などに就任するには、会社法などの手続きによって新たに選任してもらう必要があります。
経営者個人の相続財産になるもの
経営者個人の財産であれば、相続財産になります。
経営者の相続財産を整理する際は、①経営者の私的な財産、②経営者が会社に貸している財産、③会社に対する財産権の3つに分けて考えるとよいでしょう。
経営者の私的な財産
経営者個人のプライベートな財産のことです。
たとえば、個人の預貯金、個人で投資した金融資産、自宅の不動産などが該当します。
経営者が会社に貸している財産
一見すると会社の財産のように見えるものが、実は、経営者個人の財産だったということもあります。
たとえば、経営者個人の土地を、事務所や社宅の敷地として会社に賃貸している場合などです。
「なぜそんな紛らわしいことをするのか」と思われるかも知れませんが、会社が支払う賃料は会社の経費になるので、法人の節税になるのです。
また、賃料を支払っているとは限らないのですが、会社に飾ってある美術品などが、経営者個人のものであるケースもあります。
こうしたものも見落とさないようにしましょう。
会社に対する財産権
もっともわかりにくいものが、会社に対する財産権です。
たとえば、日本で圧倒的に設立件数の多い「株式会社」では、経営者個人に割り当てられた「株式」がこれに該当します。
「株式」には、会社の利益の分配(配当)を受ける権利と、会社の経営に関わる権利があり、経営者が保有している株式には、この両方が付与されています。
したがって、経営者である親などの株式を相続すると、会社の経営に関わる権利も手にすることとなります。
また、近年、設立件数が増えている会社に「合同会社」があります。
株式会社よりも、少規模な経営に適した形態の会社です。
合同会社の経営者である場合、経営者の「出資持分」の払戻請求権が、相続財産に該当します。
会社の経営者の相続でトラブルになるケース
経営者個人の借入金に注意
会社の借入金は、経営者個人を連帯保証人としていることがよくあります。
相続では、借金のようなマイナスの財産も相続財産に含まれますので、相続すると、連帯保証人という立場まで引き継ぐことになってしまいます。
通常は会社が返済を続けますが、会社が返済できなくなれば、個人での返済が必要になってしまうため注意が必要です。
経営者の個人保証は、前から問題視されており、近年は、円滑な事業承継のための経営者保証解除に向けた対策が推進されています。
(参考)中小企業庁:事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/hosyoukaijo/index.htm
相続税が高額になることも
株式や出資持分は、その財産評価額が相続税の課税対象となります。
財産評価額は、会社によっては非常に大きな額になることがあり、驚くほど高額な相続税を負担しなければならない可能性があります。
特に株式の評価額の計算は、会社の規模や業種、財政・経営状態など複数の要素が関係します。
容易に税額をシミュレーションできないことも、こうした問題が起こる要因の一つです。
株式会社の相続トラブル
経営者の株式には、経営に関わる権利、具体的には、株主総会における議決権が付与されています。
もし、兄弟姉妹などで平等に株式を分けると、経営能力のない者まで会社の経営に口を出せる状態になってしまい、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
「我が家は兄弟の仲が良いので大丈夫」と思うこともあるでしょう。
しかし、万が一その人が亡くなれば、次はその夫や妻、子が株主になることも考えなければなりません。
「では後継者だけに株式を取得させれば良いのか」というと、他の相続人から遺留分を請求されてしまい、後継者が経営に集中できなくなる可能性があります。
会社の経営者の相続は税理士に相談を
会社の経営者の相続は、生前の相続対策・事業承継対策が重要です。
株式等の贈与税・相続税対策には事業承継税制による納税猶予・免除を、遺留分対策には経営承継円滑化法の制度を活用する方法などがあります。
特に事業承継税制は、令和6年3月31日までの手続きによって、より有利な条件で税制を適用できる「特例措置」が有効です。
ただし、要件をよく理解しないまま手を出すと、かえって多くの税金を払うことになるリスクもある税制になります。
会社経営者の相続税対策は、必ず相続専門の税理士にご相談ください。
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