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亡くなった方が連帯保証人と知らずに相続してしまった

2022年07月01日
法務税務

相続は、被相続人(亡くなった人)の財産に属した一切の権利義務を承継します。

連帯保証人としての地位も、相続の対象です。

もし、被相続人が連帯保証人であることを知らずに相続してしまった場合、どのような対応策があるでしょうか。

連帯保証人とは

連帯保証人とは、債務者が弁済できなくなったとき、代わりに債権者に弁済する義務を負う人物のことです。

借金の連帯保証人であれば、お金を借りた本人が返済できなくなったときに、その借金を肩代わりする人をいいます。

連帯保証人と保証人の違い

通常の保証人もまた、債務者が弁済できなくなったとき、代わりに債権者に弁済する義務を負う人物をいいます。

この点は、連帯保証人も保証人も同じです。

ただし連帯保証人は、以下の点において、保証人よりも厳しい条件下で弁済する義務を負わなければなりません。

【催告の抗弁権がない】

債権者から債務の履行を求められたときに「まずは債務者に請求してください」と抗弁する権利が、連帯保証人にはありません。

【検索の抗弁権がない】

債権者が連帯保証人の財産に対して債権を執行したとき、「まずは債務者の財産からにしてください」と抗弁する権利がありません。

【分別の利益がない】

連帯保証人が他にいても、債務者から請求されれば支払わなければなりません。

相続税の債務控除との関係

原則として、保証債務は相続税の債務控除の対象になりません。

ただし、債務の履行が確実で、かつ、債務者に求償しても弁済が見込めない場合は、債務控除の対象になります。

連帯保証人と知らずに相続してしまった場合の対応策

連帯保証人と知らずに相続してしまった場合の対応策は、自己のために相続のあったことをしった時から3か月以内か、3か月後かに分けて考える必要があります。

3か月以内の対応策

3か月以内であれば、相続放棄か限定承認の手続きを検討します。

【相続放棄とは】

相続人としての権利をすべて放棄する手続きのことです。

相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになりますので、プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も一切承継しません。

相続放棄をするには、自己のために相続のあったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。

裁判所:相続の放棄の申述



【限定承認とは】

プラスの財産額に限定してマイナスの財産を承継することをいいます。

相続はするものの、引き受ける債務の範囲を限定する手続きのことで、一定の手順で、債権者への弁済手続きが必要となります。

限定承認をするにも、自己のために相続のあったことを知った日から3か月以内に、すべての相続人で共同して家庭裁判所に申述する必要があります。。

裁判所:相続の限定承認の申述

【単純承認とみなされないよう注意】

相続放棄や限定承認の手続きができる3か月以内の期間のことを、熟慮期間といいます。この熟慮期間に上記のいずれの行動もとらなければ、相続を「単純承認」したとみなされます。

「単純承認」したとみなされると、相続人は被相続人(亡くなった方)の財産に属する財産や負債を、無制限に相続することになるため、注意が必要です。

また、熟慮期間の経過にかかわらず、下記の行為をすると単純承認をしたとみなされることがあります。

・相続財産の全部若しくは一部を隠匿する

・相続財産を私的に消費する

・わざと相続財産を財産目録に記載しなかった

【申述期限の延長】

プラスの財産やマイナスの財産の調査に時間を要し、相続放棄や限定承認の判断が熟慮期間内にできないときは、期間内に申立てをすることで、熟慮期間を伸長することができます。

3か月が経過している場合の対応策

この場合は、一刻も早く専門家に相談しましょう。

相続放棄や限定承認ができる期限は、自己のために相続のあったことを知った日から3か月以内ですから、亡くなった日から3か月を経過していても、相続放棄や限定承認がまったく認められないわけではありません。

複数の相続人がいる相続では、人によって相続放棄や限定承認の期限が違うこともありえますし、過去の判例では、被相続人(亡くなった人)に相続財産がまったくないと信じていて、そう信じることに相当な理由があった場合、相続財産の全部または一部の存在を認識したときから熟慮期間を起算すべきとしたものがあります。

債務の存在を知ってから3か月であるとした判例もあるようです。

ただし、判例には、それぞれ前提となる状況がありますから、すべてのケースで同じ判断ができるわけではありません。

それでも、事情があれば相続放棄や限定承認によって解決できる可能性がありますので、被相続人(亡くなった人)が連帯保証人であることを知ったときは、すぐに専門家に相談しましょう。

このほか、債権者に減額交渉を行うことを解決策とする専門家もいるようです。

相手によっては一定の効果があるのかもしれませんが、ケースバイケースでしょう。