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相続した土地はいつまでに売却すればいい?すぐに売却すると税金が安くなることも

2024年01月01日
税務

相続した土地、本当は“負動産”だった?

相続した土地が都心の一等地だったり、いつも満室の賃貸マンションの敷地だったりと、そのような都合のいいケースは残念ながらほとんどありません。

先祖代々受け継がれてきた、見たこともない郊外の土地であるというケースも沢山あります。

しかし、土地は、所有しているだけで固定資産税が発生する財産です。

また、ゴミを捨てられたり侵入されたりして周囲の迷惑になってしまわないよう、定期的に手入れをする必要もあります。

こうした土地は、時として「負動産」と呼ばれます。

財産となるはずの不動産が、マイナスにしかならない負の財産になってしまっているという表現です。

こうした土地は、早めに売却してしまうことも一つの選択肢となります。

そして、このような売却のケースでぜひ知っていただきたいのが、「相続税の取得費加算の特例」です。

相続税の取得費加算の特例とは

「相続税の取得費加算の特例」とは、相続した財産を一定の期間内に売却した人が使える、税法の特例です。

相続税という言葉が含まれていますが、相続した財産を売却した人の所得税(譲渡所得税)を安くするための特例になります。

土地を売却するときの所得税のしくみ

土地を売却するとき、もっとも注意しなければならない税金は、土地の売却益に対してかかる所得税(譲渡所得税)です。

復興特別所得税と合わせて15.315%または30.63%、市町村が徴収する住民税と合わせると20.315%または39.63%になります。

適用される税率は、土地を所有していた期間によって変わります。

相続した土地の場合、被相続人(亡くなった人)の期間を引き継いで計算します。

【土地の売却益にかかる譲渡所得税や住民税】

所有期間が5年超20.315% (うち住民税5%)
所有期間が5年以下39.63% (うち住民税9%)

(※)所有期間は売却した年の1月1日時点で判定します。

ここで重要になるのが、譲渡所得税等の対象になる売却益の計算方法です。

売却益は、売却代金から、その土地の①取得費(購入にかかった費用)(※)と②譲渡費用(今回の売却にかかった費用)を差し引いて計算します。

この売却益のことを、税務では「譲渡所得」と呼んでいます。

【譲渡所得の計算式】

譲渡所得=売却代金−(取得費+譲渡費用)

【譲渡所得税の計算式】

譲渡所得税=譲渡所得×税率

(※)相続した財産の取得費は、被相続人の購入費用を引き継ぎます。また、被相続人の購入費用の代わりに概算取得費(売却代金×5%)を取得費とすることもできます。

「相続税の取得費加算の特例」を使うと譲渡所得税が安くなる

「相続税の取得費加算の特例」とは、相続した財産の譲渡所得の計算において、取得費に、負担した相続税のうちの一定額を加算できるようになる特例です。

つまり、次のように計算できるようになります。        

【特例を使用した場合の譲渡所得の計算式】

譲渡所得=売却代金−(取得費+相続税のうち一定額+譲渡費用)

取得費に加算される相続税額の計算方法

取得費に加算される相続税の計算方法は、次のとおりです。

【取得費に加算される相続税額】

A×B/C

A:その者の相続税額

B:売却した財産の価額

C:その者の取得財産の全額

「A」は、相続税申告によって確定した、その人の負担税額になります。

「B/C」は、相続によって取得した財産のうち、売却した財産が占める割合になります。

相続や遺言で取得した財産だけでなく、みなし相続財産や、相続時精算課税や生前贈与加算によって相続税の課税対象になったものが含まれます。

また、葬式費用や債務控除を適用する前の額となります。

相続税の取得費加算の特例」を使える人の条件

相続税の取得費加算の特例を使えるのは、次の3つの条件にすべてあてはまる人です。

・条件1:相続や遺贈により財産を取得した者であること

・条件2:その財産を取得した人に相続税が課税されていること

・条件3:その財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していること

「条件3」のとおり、亡くなってから原則3年10か月以内に売却することが条件になります。

なお、特例を実際に適用するには、確定申告が必要です。

【注意】特例を使用しないほうがいいこともある

不動産の売却には、相続税の取得費加算の特例の他にもさまざまな特例があり、その中には、相続税の取得費加算の特例と併用できない(つまり選択適用となる)特例もあります。

この場合、相続税の取得費加算の特例を使わずに、他の特例を使ったほうが良い場合があるため注意が必要です。

また、相続税の取得費加算の特例における適用条件の判断や、加算できる相続税額の計算方法は、人によってかなり複雑になります。

ご自身が相続税の取得費加算の特例を使えるのか、そして使うべきなのかは、専門家に判断してもらうことをおすすめします。

土地の相続や売却に悩まれている方は、ぜひ当事務所にご相談ください。