相続ブログ

BLOG

遺産を相続させたくない!相続人の排除について

2022年03月01日
税務

生前の被相続人に対し、相続人にふさわしくない行いをした人物を、相続人から廃除できる手続きがあります。

相続人の廃除とは

相続人の廃除とは、被相続人に対し、相続人にふさわしくない一定の行いをした人物の相続権をはく奪することをいいます。

相続人を廃除するには、家庭裁判所への手続きが必要です。

相続権を失う点においては「欠格」に似ていますが、廃除は「この人に財産を相続して欲しくない」という被相続人の明確な意思表示が必要になります。

相続人の廃除の対象となる行為

・被相続人に対して虐待をした

・被相続人に重大な侮辱を加えた

・その他の著しい非行があった

審判や調停を経て、上記の事実があることが家庭裁判所に認められなければ、廃除することはできません。

したがって、専門家に相談し、虐待や重大な侮辱などがあったことを証明するための準備が必要です。

相続人の廃除の方法

相続人の廃除には、被相続人が生前に自ら家庭裁判所に請求する方法と、遺言で廃除する方法があります。

遺言で廃除する場合、遺言執行者が、遅滞なく家庭裁判所に請求をしなければなりません。

裁判所で廃除が認められた後は、その旨を役所に届け出る必要があります。

廃除の対象となる相続人とは

相続人の廃除の対象になるのは、遺留分を有する推定相続人です。

推定相続人とは

推定相続人とは、ある時点において相続人と推定される親族をいいます。

相続は死亡によって初めて開始するため、相続がまだ開始していない(被相続人がお亡くなりになっていない)時点、つまり誰が相続人であるか確定していないときは、推定相続人と呼びます。

相続人(推定相続人)の考え方

被相続人の配偶者は常に相続人(推定相続人)となり、それ以外の親族も下記の順で相続人(推定相続人)になります。

・第1順位 子 

・第2順位 直系尊属(親や祖父母など)

・第3順位 兄弟姉妹 

順位の数字が若いほど優先して相続権が認められ、後の順位は、先の順位の相続人がいない場合に初めて相続人になります。

各順序の続柄は、故人からみた続柄になります。

【第1順位の子】

文字どおり、被相続人のお子さん(養子を含む)です。

戸籍上の子のことをいいますので、親権の有無は関係ありません。

よって、別れた夫や妻が引き取った子も含まれます。

なお、子がすでに亡くなっているなど一定の事由があるときは、その子供(被相続人からみた孫)が相続人になります。

これを代襲相続といいます。

孫もまた同様に一定の事由があれば、さらに下の直系の親族(ひ孫、玄孫…)と代襲相続が発生し続けます。

相続のときに出生していない子は相続人になりませんが、胎児であれば相続権が認められます。

なお、相続人の廃除も、代襲相続の発生原因の一つとなります。

代襲相続が発生する原因には、相続以前に死亡していることのほかにも、欠格、そして廃除が含まれることが法律上明記されているためです。(民法第887条)

つまり、お子さんを相続人から廃除しても、お子さんに子供(被相続人の孫)がいれば、その人物(被相続人の孫)が相続人になります。

【第2順位の直系尊属】

「直系尊属」とは、基本的には両親のことです。

父のみ母のみのように、どちらか1人がいれば、その1人が相続人となります。

もし両親とも相続権がない場合で、親より上の直系の親族(祖父母、曾祖父母…)がいれば、その人が相続人になります。

【第3順位の兄弟姉妹】

第1順位の相続人(代襲相続人含む)がおらず、第2順位の相続人もいなければ、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

兄弟姉妹にも、一代限りの代襲相続があるため、その子供(被相続人の甥・姪)が相続人になることがあります。

ただし、兄弟姉妹には遺留分がないため、相続人の廃除の対象になりません。

遺留分を有する相続人(推定相続人)とは

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる、最低限の遺産を相続できる権利です。

基本的にはその相続人の相続分の2分の1が遺留分になりますが、相続人が直系尊属である場合に限り、3分の1になります。

相続人の廃除が、遺留分を有する相続人(推定相続人)に限定されている理由は、遺留分のない相続人であれば、遺言で全財産を他の人に相続・遺贈することによって、同等の効果が得られるからです。

廃除以外の方法で相続権をなくすには

遺留分を超える分の財産であれば、遺言によって相続させないようにすることが可能です。

ただし、遺留分の計算対象となる財産は相続開始のときに被相続人が保有していた財産だけではありません。

そして、遺留分より少ない遺産しかもらえなかった相続人は、財産を多くもらった他の人物に遺留分侵害額を請求する権利があります。

したがって、安易な計算で遺留分ギリギリまで遺言で遺産を減らそうとしても、遺留分をめぐる争いに他の相続人を巻き込む可能性があるということです。

専門家にご相談ください。