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土地の評価単位について

2021年11月01日
税務

土地の価単位について解説します。

評価単位の重要性

土地の相続税評価額の計算方法には、さまざまなルールがあります。

宅地(建物の敷地として利用されている土地)であれば、路線価方式や倍率方式、路線価方式であれば路線価の補正率など、たくさんの論点がありますので、そちらに目を奪われがちではないでしょうか。

ところが、こうした計算をするためには、土地の評価単位、つまり、土地のどこからどこまでを1つの土地として評価するかを判定しなければなりません。

「そんなの登記簿で1筆ごとに区切られているじゃないか」と思うかも知れませんが、相続税評価額は、必ずしもこの「1筆」を1単位として計算できるものではありません。

いくら正しい評価方法を知っていても、評価する単位を誤ると、使用する補正率を間違えたり、地積規模の大きい宅地による減額ができなくなったりします。

つまり、土地の評価単位は、土地を相続したすべての人が知らなければならない非常に大切なことなのです。

評価単位の判定方法

評価単位は地目ごとに決まっている

評価単位の基本は「地目別」です。

ただし、地目によっては、それ以外の要素も加味して判定しなければなりません。

具体的には、下記のとおりです。

【地目別の評価単位一覧】

地目評価単位
宅地利用の単位となっている1区画の宅地(=1画地の宅地)
田・畑(農地)耕作の単位となっている1区画の田及び畑(農地)
山林固定資産税の台帳に登録された、1筆の山林
原野1筆の原野
牧場・池沼原野に準ずる
鉱泉地原則、1筆の鉱泉地
雑種地利用の単位となっている一団の雑種地(同一の目的で使用されているもの)

地目の判定方法

地目といえば、登記上の地目や固定資産税の課税地目などがよく知られていますが、相続税評価額を計算するときの地目は、「課税時期の現況」によって判定することとされています。

したがって、故人がお亡くなりになった時の土地の利用状況を確認し、宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、これらにあてはまらないものを雑種地に振り分けます。

このことから、登記上とは異なる地目で評価することもよくあります。

また、登記上は1筆の土地でも、その利用状況から、2つ以上の地目に該当する場合は、原則として、地目ごとに別々の土地として評価します。

ただし、異なる地目のまとまった土地があって、それらが一体として利用されているときは、全体を、その中の主たる地目で評価します

【例】スーパーの敷地(宅地)とその前にある駐車場(雑種地)

駐車場は、スーパーのお客さん用として、スーパーの敷地と一体で利用されています。

したがって、スーパーの敷地と駐車場は、一団の土地として、宅地で評価します。

宅地等の利用単位の判定方法

上記の表のとおり、宅地や雑種地は、「利用の単位」で評価単位を分ける必要があります。

「利用の単位」としてイメージしやすいものは、「使っている人」です。

同じ地目であっても、その中で使っている人が違う部分があれば、評価単位を分けます。 たとえば、次の宅地をご覧ください。

(出典)国税庁質疑応答事例「宅地の評価単位-自用地と自用地以外の宅地が連接している場合」より
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/02/03.htm

AとBの土地はいずれも同じ人が所有する土地ですが、Aは所有者の自宅の敷地ですので、使っているのは所有者自身です。

これに対し、Bの建物の一部は他者に賃貸されていますから、Bは建物を借りている人からも使われています。

この場合、AとBは利用の単位が異なるため、別の土地として評価します。

次の宅地も同様です。


(出典)国税庁質疑応答事例「宅地の評価単位-貸宅地」より
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/02/05.htm

AとBは、どちらも他者に賃貸している点では同じですが、貸している相手が別人なので、これも利用の単位が異なります。

したがって、AとBを別々に評価します。

【利用単位の例外】使用貸借の場合

たとえば、親の土地に親と子がそれぞれで自宅を所有している場合、親が子から賃料をもらわずにタダで土地を貸しているケースがあります。

このようなタダでの貸し借りを「使用貸借」といいます。

「使用貸借」であれば、子が使用している部分も含めて1つの宅地として評価します。

「使用貸借」には、賃貸借で発生する「借地権」や「賃借権」といった土地に対する権利が発生しないからです。

遺産分割で異なる人が取得した場合

利用の単位が同じであっても、それを異なる人が相続や遺贈で取得した場合は、「取得した人」でも評価単位を分けます。

たとえば、前項の例で、故人の自宅部分の敷地は配偶者、子の自宅部分の敷地は子、のように遺産分割で分けた場合は、配偶者が取得した土地と子が取得した土地を別々に評価します。

ただし、通常の用途で使えないような著しく不合理な分割があったときは、分割前の状況で評価することとされています。 評価額を下げようとしてわざと使いづらい形に分割してもダメということです。

まとめ

以上のとおり、土地は、地目ごとに定められた評価単位で判定します。

なお、今回は、宅地の判定をメインに解説していますが、田・畑、山林、原野、雑種地には、それぞれ評価単位の例外ルールがあります。 詳しくは専門家にご相談ください。