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家族信託って何の役に立つの?5つのメリットを解説

2023年10月01日
法務

家族信託という言葉は聞いたことがあっても、自分にとってメリットがある制度なのかわかりづらいという方はたくさんいらっしゃると思います。

今回は、家族信託がどのような場面で役立つのか、具体例で解説します。

家族信託の5つのメリット

家族信託のメリットは、将来、家族が認知症になるなどして、自分で財産を管理できなくなってしまう事態に備えられることです。

認知症になっても家族が代わりに財産を処分できる

認知症などによって判断能力を失うと、家族であっても、その人の財産を自由に処分することができなくなります。

たとえば、老人ホームなど施設の入所費用を捻出するために親の持ち家を売却しようとしても、親が認知症になってしまうと、それができなくなってしまうということです。

このような事態を防ぐために、元気なうちに持ち家の管理をお子さんなどに家族信託で任せる方法があります。

成年後見制度よりも柔軟に管理できる

認知症などによって判断能力を失ってしまった人の財産を管理する方法に、成年後見制度があります。

成年後見制度とは、家庭裁判所から成年後見人に選ばれた人が、成年被後見人(認知症などによって判断能力を失った人)の財産を管理する法制度になります。

ところが、この制度による財産の管理は、裁判所の監督下でおこなわれるものであり、自由に運用や処分ができるわけではありません。

本人のためになる行為であっても、制約を受けることがあります。

これに対し、家族信託で財産を管理する場合、成年後見制度よりも自由に設計することが可能です。

後に成年後見制度を利用することになっても、家族信託によって委託した財産は、家族信託で管理することができます。

財産管理ができない者に財産を渡したい場合にも使える

家族信託は、財産管理ができない者のために活用することもできます。

たとえば、認知症になってしまった妻の介護をしている夫が、自分が亡くなった後の妻の生活を守るために、家族信託を活用するケースが考えられます。

この場合の家族信託では、お子さんなどに財産管理を委託し、まずは自分を受益者にして、自分が亡くなった後は妻を受益者にするなどして活用します。

このほかにも、お孫さんなどの年少者にまとまった預金を遺したい場合に家族信託を活用することも有効です。

年齢が若いうちに大金を手にすると、つい浪費したり、騙されて取られてしまったりするかも知れません。

そのような悲劇が起こらないよう、家族信託によって、預金を生前のうちに親など信頼できる人物に託しておき、ある年齢までは、たとえば年〇万円までしか渡さないなどと取り決めておくことによって、この心配を解消することができます。

相続後の承継先も決めることができる

家族信託では、いわゆる二次相続以降の財産の受益者も指定することができます。

たとえば、先祖代々守ってきた一等地の宅地が、お子さんの配偶者の家系に流れてしまわないようにしたいという場合、家族信託で、自身の相続人が亡くなった後の受益者を子に、子が亡くなった後は孫に…と設定することによって、一族で承継し続けることができます。

経営や事業承継にも活用できる

家族信託は、会社経営や事業承継のさまざまな問題を解決する手段にもなります。

たとえば、会社の経営者が認知症になってしまうと、会社の業務執行や意思決定に支障をきたします。

そうなる前に、会社を後継者に渡すことができれば良いのですが、後継者にしたい人物が未熟であることや、贈与税や買い取り資金が支払えないことが問題になる場合があります。

また、株式をすべて後継者に渡してしまうと、経営者の老後の生活が不安定になることも考えられます。

このような問題の解決方法として、経営者が保有する会社の株式を将来の後継者に託し、自分は委託者兼受益者になる方法があります。 ただし、こうした問題には家族信託以外の解決方法も存在しますし、信託受益権の贈与や相続では、事業承継時の優遇税制である「事業承継税制」を適用できないことに注意が必要です。

まとめ

家族信託は、柔軟な設計によって、家族の認知症対策になったり、介護を必要とする家族の支えになったりと、さまざまな問題を解決できる制度になります。

ただし、まだまだ歴史の浅い制度であるため、裁判例などが少ない点には注意が必要です。

家族信託にご興味のある方は、どのような活用方法が自分にとって良いのか、どういった点が落とし穴になるのかを、専門家に相談して確認しましょう。