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遺言で認められること、認められないこと

2022年02月01日
法務

定められた方法に従って行われた遺言は、法的効力をもちます。

「〇〇は長男に相続させる」のような、特定遺贈と呼ばれる使い方ができることはよく知られていますが、これ以外にも、遺産に関する内容や遺産以外に関する内容を定めることができます。

※遺言で効力が認められるものには、遺言以外の方法(生前の意思表示等)でも認められるものがあります。詳しくは、専門家にご相談ください。

遺言による相続分の指定

相続人の相続分は民法で定められていますが、遺言によって、それと異なる相続分を指定したり、相続分を定めることを第三者に委託したりすることができます。

遺産分割の方法の指定

遺言によって、遺産分割の方法を決めたり、決めることを第三者に委託したりすることができます。

【遺産分割の方法】

  現物分割:遺産そのものを現物のままで分割する方法

  換価分割:遺産を金銭に換価して分割する方法

  代償分割:遺産を多く取得した人が、他の相続人に金銭を支払う方法

遺産分割の禁止

相続人は遺産分割によって、誰が何の遺産を相続するかを決めることができます。

遺言では、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割をすることを禁じることができます。

包括遺贈者を定める

遺言によって、包括受遺者(相続人と同じ権利義務をもつ者)を定めることができます。

相続人でない者に相続人同等の権利を与えることができますが、同時に義務(負債)も負わせることになる点に注意が必要です。

停止条件付の遺言

遺言は、遺言者の死亡時から効力を生じますが、この効力の発生時期に関して、停止条件を設けることも可能です。

たとえば、「長男が大学に進学したらA銀行の預金を遺贈する」というように、停止条件が成就した場合に遺言の効果を発動させることができます。

負担付の遺言

受遺者に、財産を遺贈する代わりに一定の給付義務を負わせる、負担付きの遺言をすることもできます。

たとえば、自宅不動産をAに相続させるが、その代わりにペットの世話を頼むようなイメージです。

ただし、遺贈する財産の価額を超えない範囲でなければ、負担義務を負わせることはできません。

遺言執行者の指定

遺言で、遺言執行者を指定したり、指定を第三者に委託したりすることができます。

遺言執行者は、親族でなくても構いませんし、複数人いてもいません。

遺言には、受遺者に遺産を相続する権利を与えますが、受遺者がそのとおり受け入れるかどうかは自由で、遺言とは異なる遺産分割に至るケースもあります。

これに対し、遺言執行者には、遺言の執行に必要となる財産管理などの一切の行為をする権利義務があり、相続人は遺言執行者による執行を妨げることはできません。執行を妨げる行為があれば、それは原則として無効となります。

よって、遺言の内容をできる限り実現したい場合は、遺言執行者を指定することが一般的です。

前に書いた遺言を撤回する

自分で書いた遺言を、新しい遺言で撤回することも可能です。

内容の一部だけを撤回することもできます。

仮に遺言書が2通あって、前の遺言と後の遺言で内容に異なる部分があるときは、後の遺言によって前の遺言の撤回があったとみなすルールもあります。

配偶者居住権の存続期間

配偶者居住権とは、被相続人名義の建物に住んでいる配偶者が、相続後も引き続きその建物に無償で住み続けることができる権利をいいます。

夫や妻にこの権利を遺贈することを、遺言によって定めることもできます。

また、配偶者居住権の存続期間は、原則的には、配偶者が亡くなるまで有効ですが、遺言でその期間を定めることもできます。

特別受益の持ち戻しの免除

特別受益の持ち戻しとは、被相続人からの遺贈や婚姻・養子縁組・生計資本として生前に贈与を受けた相続人がいる場合、その遺贈や贈与の額(特別受益)を相続財産に加えてから相続分を計算するというルールです。

このルールによって、特別受益を受けた相続人は、相続時に受け取れる遺産が計算上少なくなります。

この特別受益を相続に持ち戻すルールを、遺言などによる意思表示で免除することができます。

なお、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産が贈与・遺贈された場合、特別受益の持ち戻しの免除の意思表示がなかったとしても、その意思表示があったと推定されるルールもあります。

推定相続人の廃除

被相続人は、虐待や重大な侮辱による加害行為や、その他著しい非行のある推定相続人(その時点で相続人になると予想される人物)を、家庭裁判所に請求することによって、相続人から廃除することができます。

この請求を、遺言によって遺言執行者にしてもらうことも可能です。

未成年後見人・後見監督人の指定

未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができます。

この場合、未成年後見監督人を指定することもできます。

子の認知

婚外子の場合、父親は役所に認知の届け出をすることで、戸籍上の父となります。

この認知を、遺言によって行うこともできます。