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遺産分割がまとまらないまま10か月|未分割で相続税申告して特例を取り戻す方法

2026年09月15日
法務税務

話し合いが長引いても、10か月の期限は待ってくれません

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です。この10か月は、遺産分割の話し合いが終わっていなくても延びません。実家をどうするか、誰がいくら受け取るかが決まらないまま、期限だけが近づいてくる状態は珍しくありません。

滋賀県の高齢化率は2025年7月1日現在で27.5%(人口1,396,619人のうち65歳以上が375,696人)と、県内でも相続そのものは年々身近になっています(出典:滋賀県「県内の高齢者の状況等について」)。全国では令和6年分に亡くなった160万5,378人のうち、相続税の申告書が提出されたのは16万6,730人で、およそ10.4%にあたります(出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」。滋賀県分の計表は大阪国税局の同資料で公表されています)。

分割がまとまらない場合でも、正しい手順を踏んでおけば、いったん納めた税金を後から取り戻せます。逆に、この手順を知らずに申告してしまうと、本来使えたはずの特例を永久に失うことがあります。

分割が決まらないときは「未分割」で申告します

遺産分割協議が終わっていない場合は、いったん法定相続分で財産を取得したものとして計算し、期限内に申告・納税します。これを未分割申告といいます。

期限を過ぎて何もしないでいると、無申告加算税や延滞税がかかります。申告期限そのものを過ぎてしまった場合の取扱いは相続税の申告期限を過ぎたらどうなる?で解説していますが、未分割申告はそれ以前の話で、「期限内に申告はする。ただし分け方が決まっていない」という状態です。

未分割だと使えなくなる2つの特例

問題は、未分割の段階では次の2つが使えないことです。

どちらも、誰がその財産を取得するかが決まっていないと適用できません。そのため未分割申告では、これらを使わない状態の高い税額をいったん納めることになります。自宅の評価が下がらない分、想定より大きな金額を用意しなければならないケースもあります。

なお、未分割で使えなくなる制度はこの2つだけではありません。特定計画山林の特例や農地等の納税猶予なども、分割が決まっていないと適用できません。未分割の財産は物納に充てることもできません。

「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付する

ここが最も重要な手続きです。未分割申告のときに、申告書へ「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくと、申告期限から3年以内に遺産分割ができた時点で、上記の特例を適用できます(国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告、国税庁 B1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続)。

この見込書は、分割の見込みの詳細と、分割されていない理由を書いて提出するだけの1枚の書類です。手間はほとんどかかりません。それにもかかわらず、添付を忘れたまま申告してしまうと、後から分割がまとまっても特例が使えなくなります。未分割の財産が少しでも残っているなら、必ず綴じ込んでください。

分割できたら4か月以内に更正の請求をする

遺産分割がまとまったら、そこで終わりではありません。分割の日の翌日から4か月以内に、特例を適用して計算し直した更正の請求書を提出することで、納め過ぎた税金の還付を受けられます。

この4か月は短く、分割協議がまとまった安心感でうっかり過ぎてしまうことがあります。還付される金額は数百万円単位になることも珍しくないため、協議書に判を押した日を起点にすぐ動いてください。相続税が戻ってくるケース全般については払いすぎた相続税、返ってくる?でも触れています。

3年たっても決まらないときは承認申請を出す

訴訟が続いているなど、3年以内に分割できないやむを得ない事情がある場合は、申告期限から3年を経過する日の翌日から2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署長に提出し、承認を受ける方法があります(国税庁 B1-6 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続)。

承認されれば、判決や調停が確定した日の翌日から4か月以内に分割すれば特例を使えます。ただし「話し合いが進んでいないだけ」では認められないのが原則です。裁判所の手続きが係属していることなど、客観的な事情が求められます。

未分割が続くと、税金以外でも支障が出ます

税額の話だけではありません。分割が決まらない状態が続くと、日常の場面でも困りごとが増えます。

  • 不動産を売れない・貸せない:相続人全員の共有状態になるため、売却も賃貸も全員の同意が必要になります
  • 預金が動かせない:金融機関の手続きに遺産分割協議書か相続人全員の署名押印が求められます
  • 相続登記の期限が来る:相続登記は3年以内の申請が義務化されており、分割が決まらない場合は相続人申告登記で対応することになります(相続登記の義務化で何が変わった?)
  • 次の相続が起きる:相続人の誰かが亡くなると相続人がさらに増え、話し合いはいっそう難しくなります

「そのうち話し合えばいい」と先延ばしにするほど、選べる手段が減っていきます。

話し合いで決まらないときは家庭裁判所の手続きへ

当事者だけで結論が出ない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てることになります。調停委員が間に入り、相続人それぞれから事情を聞きながら合意を目指す手続きです(裁判所「遺産分割調停」)。

調停は一度の期日で終わることは少なく、期日を重ねながら進みます。話合いがまとまらず不成立になった場合は自動的に審判手続が開始され、裁判官が分割方法を決めます。申立てから終了まで相応の期間がかかるため、申告期限の3年をにらんだ逆算が必要です。家庭裁判所の手続き全体の流れは遺産分割協議が整わない場合の手続で説明しています。

なお、相続人の関係が悪く申告書を一緒に出せない場合は、相続人ごとに別々に申告することもできます。この点は相続人同士が不仲なら申告書は別々に提出できる?をご覧ください。

そもそも未分割にしないために

未分割申告は、あくまで期限に間に合わせるための応急処置です。いったん高い税額を納める資金負担があり、更正の請求という手続きも増えます。できれば10か月以内に分割まで終える形が理想です。

そのために有効なのは、遺言書を残しておくことと、相続が起きた直後から財産の全体像を早く確定させることです。財産の内容が分からないまま話し合いを始めると、疑いが生まれて話が止まります。預金・不動産・保険・借入れの一覧を早い段階で作り、相続人全員が同じ資料を見ている状態を作るだけで、進み方は大きく変わります。

財産の一覧がある程度そろった段階で話し合いの場を設けると、そこから先へ進むことがあります。相続人だけで集まると切り出しにくい話も、第三者が同席して財産の内容を説明する形であれば話しやすくなる面があります。当事務所でも、その場で財産の中身をご説明する役割でお手伝いしています。ただし税理士は紛争の代理人になれないため、相続人同士の主張がすでに対立している場合は弁護士へのご依頼が必要になります。

まとめ

遺産分割が終わっていなくても、相続税の申告期限10か月は延びません。まずは法定相続分で未分割申告を行い、「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付してください。3年以内に分割できれば、配偶者の税額の軽減も小規模宅地等の特例も後から適用でき、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をすれば納め過ぎた税金が戻ります。

期限は10か月・3年・4か月・2か月と続き、どれも過ぎると取り返しがつきません。話し合いが長引きそうだと感じた時点で、期限の管理だけでも先に手を打っておくことをおすすめします。

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滋賀県草津市に拠点を置いており、草津市・大津市・守山市・栗東市・彦根市・近江八幡市など滋賀県全域の相続に対応しています。

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