相続ブログ

BLOG

相続する実家(空き家)は生前のうちに解体して更地にすべき?認知症の相続人がいる相続登記の方法

2025年01月01日
法務

相続登記とは

相続登記とは、相続した不動産の名義を、亡くなった方(被相続人)からその不動産を取得した相続人などに変更するための、所有権移転登記の手続きのことです。

令和6年4月から相続登記は義務に

令和6年4月1日から、不動産(土地・建物)を相続で取得した方には、相続登記の申請をすることが義務化されました。

正当な理由がある場合を除き、遺産分割などから3年以内に相続登記を行わなければ、10万円以下の過料が課されることがあります。

実際に過料が課されることは多くないとは考えられますが、現在の名義人に正しく登記しないことは、将来、所有者がわからない空き家や不動産の放置につながりかねません。

これが、災害時の対応や周辺地域の開発の妨げになることも考えられますので、相続登記は忘れないうちに済ませておくことが大切です。

認知症の人がいる場合の相続登記の注意点

高齢化の増加に伴い、認知症を患う方の人数も増加傾向にあります。

特に、2025年には5人に1人が認知症を患うと推計されており、今後、相続人の中に認知症の方がいるケースがますます増えると考えられます。

では、相続人の中に認知症の方がいる場合、不動産の遺産分割や相続登記を行う際に、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

遺産分割や登記の申請を単独で行えない場合がある

認知症により判断能力が不十分な方については、遺産分割をはじめとする法律行為を単独で行うことができません。相続登記の申請など、遺産分割後の各種手続きについても同様です。

理由は、本人が相続に関する自身の権利や義務を理解することが難しくなり、万が一、不利益な内容を押し付けられた場合、それを認識できないまま受け入れる可能性があるためです。

そのため、判断能力が不十分な方が単独で行った契約関係は無効とされるルールになっています。

成年後見制度を利用する

認知症により判断能力が不十分になった方の場合、成年後見制度を利用する方法があります。

成年後見制度とは、家庭裁判所が選任した成年後見人が、被後見人(判断応力が不十分となった方)の財産に関する法律行為(遺産分割協議など)を代わりに行う制度です。

被後見人となっている相続人がいる場合、成年後見人が遺産分割協議に代理で参加します。

本人に判断能力がある場合の任意後見制度

すでに判断能力が不十分になってしまった方には利用できませんが、将来に備え、本人が判断能力を有しているうちに任意後見人を定めておく「任意後見制度」という仕組みもあります。

任意後見制度では、判断能力があるうちに、将来の自身の任意後見人となる「任意後見受任者」と「任意後見契約」を公正証書により結びます。そして、本人の判断能力が不十分になった際、その任意後見人を監督する「任意後見監督人」を家庭裁判所が選任することにより、契約の効力が発生します。

遺産分割協議の代理権が任意後見契約の内容に含まれていれば、任意後見人が本人に代わり遺産分割協議に参加することも可能です。

認知症の相続人がいる場合の相続登記

最後に、認知症の相続人がいる場合の相続登記の方法についてまとめます。

遺産分割を行ってから相続登記をする場合

成年後見人を選任し、遺産分割協議を行ってから相続登記をする方法です。この場合、相続登記の申請には、遺産分割協議書(成年後見人も署名押印しているもの)が必要になります。

法定相続分で相続登記をする場合

相続登記は、法定相続分で行うこともできます。

この方法では遺産分割協議書は不要ですが、不動産が相続人全員の共有状態となる点に注意が必要です。

もし共有者の中に、認知症により判断能力が不十分となった方がいれば、その不動産全体を将来処分しようとしても時、その同意を得ることができません。

できれば、成年後見制度を利用して遺産分割を行い、相続登記を行うことをおすすめします。

相続人申告登記について

遺産分割協議がまとまらず、相続登記の義務を3年以内に果たせそうにない場合には、『相続人申告登記』の手続きを行うことで、登記義務を果たすことができます。

ただし、遺産分割がまとまった際には、その「遺産分割の日から3年以内」に改めて遺産分割の結果に基づく登記を行う義務が発生するため、この点には注意が必要です。

まとめ

相続手続きには複雑なケースも多く、特に認知症の相続人がいる場合には、適切な準備と対応が必要です。

少しでもご不安な点や疑問があれば、お気軽に当事務所までご相談ください。