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介護につとめた「嫁」も財産を受け取れる?!新制度に着目

2025年11月01日
税務

2019年に相続制度が大きく改正されました。これにより、現代の社会状況に合わなくなっていたルールや、不便・不公平だった規則が見直され、相続を迎えるご家族にとって非常に重要な改正となっています。 しかし、相続は人生で何度も経験することではないため、従来の制度のまま理解している方も多くいらっしゃいます。そこで今回は、2019年7月から改正された相続制度の中でも、特に誤解が多くトラブルになりやすい「預貯金の仮払い制度」、「遺留分侵害額請求権」、「特別の寄与」についてご紹介します。

預貯金の仮払い制度とは

現行制度における預貯金の「仮払い制度」とは、一定の金額までであれば、被相続人名義の預貯金を一部の法定相続人だけで出金できる制度です。

この制度のポイントは、相続人全員の同意がなくても、相続人である一人が単独で、相続財産である預貯金から金銭を引き出せる点にあります。

以前は、遺言がある場合を除き、遺産分割が完了するまで預貯金の払い戻しができませんでした。これは、相続財産が遺産分割までは相続人全員の共有物とされているためで、一部の相続人の依頼では銀行から勝手に預貯金を渡すわけにいかなかったためです。

しかし、このルールは生活費や葬儀費用など、急な支出には不便なものでした。

そこで、「預貯金の仮払い制度」により、一定の金額までであれば、被相続人の預貯金を単独でも払い戻すことが可能となりました。

仮払いできる金額

単独で引き出せる金額は、次の計算式で求められる金額までです。

【計算式】

相続開始時のその口座の残高×3分の1×その人の法定相続分

【計算例】

・残高が600万円で法定相続分が2分の1の相続人の場合

→ 100万円を単独で払い戻すことができます。(600万円×3分の1×2分の1)

預貯金の仮払い制度の注意点

相続について争いが生じて家庭裁判所に審判や調停が申し立てられている場合には、家庭裁判所の判断で払い戻しが認められることになります。

この場合、払い戻し金額も家庭裁判所が決定しますのでご注意ください。

遺留分侵害額請求権とは

遺言は、故人の財産に対する意思を尊重するためのものであり、たとえば相続人でない人に全財産を譲るという内容でも有効です。しかし、そのような遺言によって相続人が生活に困らないよう、法律では「遺留分」という最低限の権利が相続人に保障されています。

この遺留分を侵害された相続人は、遺贈や贈与により財産を受け取った人に対し、現行制度では、その侵害額を「金銭」で請求することになっています。

もし相続人の遺留分が侵害された場合、遺贈や贈与により財産を受け取った人に対して、現行制度ではその侵害額を「金銭」で請求することができるようになっています。以前は「遺留分減殺請求権」と呼ばれ、遺贈や贈与された財産そのものが請求の対象でしたが、その場合、対象物が複数の相続人と共有状態になるという問題がありました。

たとえば、経営者の相続において、後継者が引き継ぐべき株式や事業用不動産が経営に関心のない親族と共有状態になり、経営に支障がでるなどの不合理が生じていたのです。

このような問題を解消するため、こうした問題を解消するため、現行制度では「遺留分侵害額請求権」として遺留分に足りない額は金銭で請求することになりました。

この制度により、相続人にとっては複雑な共有関係を避けることができ、また、故人にとっても特定の財産を特定の相続人に確実に渡しやすくなりました。

請求できる金額の目安

たとえば、経営者である被相続人が亡くなり、後継者である長男に事業用不動産1億円を、次男に預貯金2,000万円を相続させる遺言を残したケースを考えてみましょう。この場合、次男の遺留分は3,000万円(法定相続分の2分の1)ですが、遺産の額は2,000万円のため、遺留分に対して1,000万円不足しています。

かつての制度では、不動産1億円の持ち分(1,000万円分)を請求することになっていましたが、現行制度では、金銭で1,000万円を長男に請求します。

特別の寄与とは

「特別の寄与」とは、本来は遺産を受け取る権利のない「相続人以外の親族」が、生前に被相続人(故人)の介護などで特に貢献した場合、その貢献に応じた金銭を相続人に請求できる権利です。

たとえば、長男の妻が義父の介護にどれだけ尽力していても、法律上、義父の遺産を相続する権利はありません。しかし、現行制度では、介護などの貢献に応じた額の金銭を「特別寄与料」として相続人に請求することが可能になりました。

特別寄与料を請求できる条件

特別寄与料を請求するためには、次の条件を満たす必要があります。

・被相続人の相続人ではない親族であること(例:被相続人の子の配偶者など)

・生前の被相続人に対し、無償で療養介護やその他の労務提供を行い、その遺産の維持または増加に貢献していること

話し合いが成立しない場合

相続人との話し合いで合意が得られない場合、特別の寄与を行った親族は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。

ただし、この申立てには期限があり、相続の開始を知った日から6か月、または相続開始から1年を過ぎると申し立てができなくなるためご注意ください。