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デジタル遺産の相続はどうする?|ネット銀行・暗号資産・サブスクの調査と手続きを解説

2026年03月21日
法務税務
デジタル遺産の相続はどうする?|ネット銀行・暗号資産・サブスクの調査と手続きを解説

通帳がない財産をどう見つけるか——デジタル遺産という新しい課題

相続が発生したとき、まず行うのは故人の財産調査だ。銀行口座、不動産、生命保険、株式——従来の相続財産は紙の通帳や証書、郵便物などから存在を把握できた。

ところが最近は、ネット銀行・ネット証券・暗号資産(仮想通貨)・電子マネー・サブスクリプションなど、紙の記録が一切残らない「デジタル遺産」を持つ方が増えている。スマートフォンの中だけで資産を管理していた場合、相続人がその存在にすら気づけないことがある。

デジタル遺産の問題は、見つけにくいだけでなく、相続税の申告漏れや不要な課金の継続につながる点にある。この記事では、デジタル遺産の種類ごとに、調査の方法と相続手続きの流れを整理する。

デジタル遺産にはどんなものがあるか

デジタル遺産とは、インターネット上で管理されている財産や契約のことだ。相続税の課税対象になるものと、課税対象にはならないが手続きが必要なものがある。

相続税の課税対象になるもの
種類具体例
ネット銀行の預金楽天銀行、住信SBIネット銀行、PayPay銀行など
ネット証券の有価証券SBI証券、楽天証券、マネックス証券など
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン、イーサリアムなど
電子マネーの残高PayPay、楽天Edy、Suicaなど(残高が大きい場合)
ポイント残高換金性があるポイント(楽天ポイント、Tポイントなど)
課税対象にはならないが手続きが必要なもの
種類放置した場合のリスク
サブスクリプション契約月額料金の自動引き落としが続く
SNSアカウント不正利用、なりすましのリスク
クラウドストレージ写真や書類の消失(無料プランは一定期間で削除)
オンラインショップのアカウントクレジットカード情報の残存

デジタル遺産を見つけるための調査方法

スマートフォンの中身を確認する

最も手がかりが多いのは故人のスマートフォンだ。インストールされているアプリの一覧を見るだけで、どの銀行・証券・暗号資産取引所を利用していたかが分かることが多い。

ただし、スマートフォンにはロック(パスコードや生体認証)がかかっている。故人のパスコードが分からない場合、iPhoneではAppleに「故人アカウント管理連絡先」の設定がなければ解除が難しい。Androidも同様で、Googleアカウントの「アカウント無効化管理ツール」が設定されていなければ、メーカーに問い合わせても原則として解除できない。

生前にパスコードを家族と共有しておくことが、デジタル遺産対策の第一歩になる。

通帳・メール・郵便物から手がかりを探す

ネット銀行やネット証券は、口座開設時の確認メールやお知らせが故人のメールアドレスに届いていることがある。メールアカウントにアクセスできるなら、受信トレイを「銀行」「証券」「取引所」「口座」などのキーワードで検索するのが有効だ。

また、故人のメインバンクの通帳に、ネット銀行やネット証券への送金・入金の履歴が残っている場合もある。定期的な定額引き落としがあれば、サブスクリプション契約の手がかりになる。

税務署への「開示請求」を活用する

どうしても財産が把握できない場合は、税務署に「被相続人の財産に関する情報」の開示を求めることもできる。ただし、これはあくまで税務署が把握している範囲(過去の確定申告や支払調書に基づく情報)に限られる。ネット上だけで完結する取引は税務署も把握していない可能性がある。

不動産や預貯金の調査方法については、不動産の相続財産調査をするときは名寄帳も取得しましょう口座預金の凍結解除についてもあわせてご覧いただきたい。

ネット銀行と暗号資産の相続手続き

ネット銀行の相続手続き

ネット銀行の相続は、基本的に従来の銀行口座と同じ流れで進む。ただし、窓口がないためすべて電話とオンラインで完結する点が異なる(楽天銀行 相続のお手続き)。

手続きの流れは次のとおり。

  1. 銀行のカスタマーセンターに電話し、名義人の死亡を連絡する
  2. 口座が凍結され、入出金が停止される
  3. 必要書類(戸籍謄本・印鑑証明書・遺産分割協議書など)を郵送する
  4. 書類の審査後、指定口座に残高が振り込まれる

ネット銀行特有の注意点として、登録住所の確認書類(住民票・戸籍附票など)が求められることがある。ネット銀行は本人確認をオンラインで行っているため、登録住所と戸籍上の住所が一致しているかを確認する必要があるためだ。

暗号資産の相続手続きと相続税評価

暗号資産(仮想通貨)は相続税の課税対象になる。評価額は被相続人が亡くなった日(相続開始日)の時価で計算する(国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱い」FAQ)。

具体的には、活発な市場がぁる暗号資産(ビットコイン・イーサリアムなど)は、相続開始日の取引価格で評価する。複数の取引所で価格が異なる場合は、相続人が利用している取引所の価格を基準にして問題ない。

相続の手続きは以下の流れになる。

  1. 故人が利用していた暗号資産取引所を特定する
  2. 取引所に連絡し、相続人として名義変更または残高の引き出しを依頼する
  3. 必要書類(戸籍謄本・印鑑証明書・遺産分割協議書など)を提出する
  4. 相続開始日の時価を確認し、相続税の申告に含める

暗号資産で注意が必要なのは、相続後に売却した場合に所得税がかかる点だ。取得価額は被相続人が購入した時点の金額を引き継ぐため、値上がり幅が大きいと相続税と所得税の二重課税に近い状態になることがある。売却のタイミングは税理士に相談して判断するのが安全だ。

GrowUpでも、暗号資産やネット証券に関する相続の相談は徐々に増え始めている。今後こうしたケースはさらに増えていくだろう。

デジタル遺産を放置するとどうなるか

相続税の申告漏れになる

デジタル遺産を見落としたまま相続税を申告すると、後で税務調査で発覚した場合に過少申告加算税(10〜15%)延滞税が課される可能性がある。税務署は金融機関から提出される法定調書や、暗号資産取引所からの支払調書をもとに、故人の資産を把握していることがある。

「知らなかった」は通用しない。申告前にデジタル資産の有無を確認しておくことが大切だ。

サブスクの料金が引き落とされ続ける

故人名義のクレジットカードが解約されれば自動的に止まるが、口座引き落としの場合は、口座が凍結されるまで課金が続く。年額契約のサービスだと数万円が無駄に引き落とされていたケースもある。

遺産分割協議のやり直しが必要になる

すべての財産を把握したうえで遺産分割協議を行っていた場合でも、後からデジタル遺産が見つかると、その分について再度協議が必要になる。相続人間の関係が悪化する原因にもなりうる。

生前にやっておきたいデジタル資産の整理

デジタル遺産のトラブルを防ぐ最も確実な方法は、生前に資産の一覧を作っておくことだ。

整理すべき情報は以下のとおり。

  • 利用しているネット銀行・ネット証券・暗号資産取引所の名称
  • 各サービスのログインID(メールアドレス)
  • スマートフォンのパスコード
  • 利用しているサブスクリプションの一覧
  • 2段階認証に使っている電話番号やアプリ

これらを紙のメモやエンディングノートに書いておくだけでも、相続人の負担は大幅に減る。パスワード自体を書くかどうかはセキュリティとの兼ね合いになるが、少なくとも「どの金融機関に口座があるか」だけでも記録しておけば、相続時に確認すべき先が分かる。

遺言書の中にデジタル資産の記載を含めることも有効だ。自筆証書遺言書についての記事もあわせて参考にしてほしい。

実際、ネット銀行の口座情報やスマートフォンの暗証番号などは、エンディングノートにまとめておかないと相続人が困ることになる。GrowUpでも、終活相談の際にはデジタル資産の整理をエンディングノートに含めるよう提案している。

まとめ

デジタル遺産は年々増加しているが、相続手続きは従来の財産と比べて「見つけにくい」「手続き先がバラバラ」という特徴がある。ネット銀行は電話で連絡すれば従来の銀行と同じ流れで手続きできるが、暗号資産は評価方法(相続開始日の時価)や売却時の所得税の問題があるため、税理士への相談が欠かせない。デジタル遺産の申告漏れは税務調査で発覚するリスクがある。生前にネット銀行・証券・取引所の一覧を作成し、家族がアクセスできる形で残しておくことが、最も効果的な対策になる。

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滋賀県草津市に拠点を置いており、草津市・大津市・守山市・栗東市・彦根市・近江八幡市など滋賀県全域の相続に対応しています。

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